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11月のびぃあらいぶぷらす
「年末調整」ってどういったものですか?
会社員10年目です。結婚していますが、子供はいません。
毎年秋口になると、年末調整に必要とのことで会社から用紙が配られ、記入して提出します。12月のお給与は還付で増えるという印象だったのですが、昨年は減額でした。担当部署に確認しても、間違っていないとの回答でよく分かりません。
そもそも「年末調整」とはどういったものなのでしょうか。減額は間違っていないのでしょうか。
●相談者
32歳/女性/会社員 家族構成…夫
- 「年末調整」とは“所得税のきちんとした計算”
- 税金は所得額が確定する前に“ざっくり”差し引かれている
- 正確な所得税との差額を「年末」に「調整」
【 相談者 】
「年末調整」とはどういったものですか?
【八ツ井さん】
簡単に言うと“所得税のきちんとした計算”です。
「年末調整」を別の言葉で表現するとしたら、“所得税のきちんとした計算”です。
会社員(給与収入の方)の「手取り収入」に大きく影響するのは、税金と社会保険料です(過去のコラム参照)。もちろん中には、労働組合の組合費や福利厚生に関するコスト、家賃や生命保険料などが給与から差し引かれている(天引きされている)場合もあるでしょう。ですが、ここでは個別事情のものは除いて考えていきたいと思います。
当コラム「税金の基本」の回でお話しさせていただいた通り、税金の基本的な考え方には「暦年課税」というのがあります。課税の対象となる「所得」は、暦の1年間(1月1日~12月31日)で得た所得とされる、というルールです。
【 相談者 】
「暦年課税」がどう関係してくるのですか?
【八ツ井さん】
所得額が確定する前に、概算額が引かれているのがポイントです。
ここで冷静に考えてみると、1年間の所得がいくらになるのかが決定するのは、当然に12月31日を過ぎてから、となります。ですが、実際は年末を迎える前から、毎月の給与や賞与から所得税はきちんと差し引かれています。本来であれば、所得額が確定しなければ、所得税も確定しないものなのに、どうやって税額が算出されて差し引かれるのでしょうか?
答えは、“ざっくり差し引かれる”です。“ざっくり”といいましても、何の根拠もない数字ではなく、こういう人の場合はこれくらい天引きしましょう、という概算額の一覧を国税庁が提示しており、それに準じて給与から差し引かれます。
【 相談者 】
概算額と実際の所得税に差があったらどうなるのですか?
【八ツ井さん】
その差を「年末」に「調整」しているのです。
では、概算で差し引かれていた所得税額を、どのタイミングで正確な数値に合わせるのかというと、それが12月の給与であり、年末調整の役割になります。そのため、毎年秋口になると専門の用紙が配布され、従業員一人ひとりの家族構成や保険の加入状況等といった、所得税の計算に必要な細かい情報をヒアリングするのです。これにより1年間の年収が確定するタイミングで、「給与所得」が計算され、さらに「所得税」が求められます。
所得税額が分かれば、12月までに“ざっくり”差し引かれていた税金額(源泉徴収額)と正確な所得税額との過不足を計算し、多く取りすぎていたら還付し、少なかったら給与から減額することで、読んで字のごとく「年末」に「調整」しているわけです。
したがって、今回のご相談者のケースでは、気持ち的にはお給与が減額となり、なんとなく多く納めている印象があるかもしれませんが、逆に言えば、12月までのお給与が少し多かった、と言えるのです。みなさん同じ計算スキームに則って計算されていますので、損ということはありません。
ちなみに住民税に関しては、所得税の申告内容がお住まいの自治体に提出され、それから納税となるため、所得税を納めるタイミングとの間に時間差が生じます。社会人1年目に住民税が徴収されなかったり、退職してから住民税の納付書が届いたりするのは、こうした手続きのタイミングのズレによるものです。
【回答者プロフィール】
回答者/八ツ井 慶子さん
生活マネー相談室代表。家計コンサルタント(FP技能士1級)。
大学卒業後、信用金庫勤務を経て、2001年4月より「家計の見直し相談センター」の相談員としてFP活動を始める。13年7月に独立し、「生活マネー相談室」を設立。個人相談を中心に、講演、執筆、取材などの活動を展開。これまで1000世帯を超える相談実績をもつ。
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