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パルシステムの健康・おうえんナビ
12月のびぃあらいぶぷらす
薬局で購入した医薬品で税金が控除されると聞きました。詳しく知りたいです
年間の医療費が10万円を超えたら確定申告することで税金が戻ってくること(医療費控除)は知っていましたが、先日友だちと世間話をしているときに、「市販薬の購入費でも税金が戻ってくるケースがあるらしい」と聞きました。
私自身、花粉症で鼻炎薬や目薬をよく購入しますし、解熱剤や風邪薬は常備薬なので、とても気になっています。どのような制度なのか、どうしたら税金を戻すことができるのかを教えてください。
●相談者
47歳/女性/パート勤務 家族構成…夫(会社員)、娘(中学生)、息子(小学生)
- 還付を受けるには要件をすべて満たす必要がある
- 還付対象となるのは1万2,000円を「超えた分」
- 購入者(申告者)の所得税率によって還付金額が変わる
要件をすべて満たしていれば税金が戻ってきます
お友だちがお話しされたことは本当です。いわゆる「セルフメディケーション税制」のことですね。
健康の維持や増進のための一定の取り組みを行っていれば税金をお安くしましょう、という考えのもと、導入された税制です。ただし、実際に税金の還付(戻し)を受けるにはいくつか要件があり、それらをすべて満たす必要があります。
■要件①
予防接種や健康診断の受診といった健康のための「一定の取組」を行っていること(要証明書類)
■要件②
購入した医薬品は、セルフメディケーション税制対象品目であること(要レシート)
■要件③
上記医薬品の年間購入金額は1万2,000円超であること
■その他
確定申告を行うこと、医療費控除を受けていないこと
これらの要件を踏まえ、簡単な事例で税金の還付がどの程度になるのか確認してみましょう。
まず、対象医薬品を1月1日~12月31日の1年間で2万円分を購入したとします。購入者は一家の大黒柱であり、かつ納税者である夫で、ひとりで家族分の対象医薬品をすべて購入したとしましょう。もちろんレシートはすべて保管しています。また、その年に夫は会社の健康診断を受けていて、その結果票も手元にあるとします。医療費控除は受けません。
これで要件は満たしました。となれば、税効果の計算です。
年間購入額から1万2,000円を引いた分が還付対象
ポイントは、1万2,000円を「超えた分」が還付対象として、所得から差し引ける点。事例では2万円でしたので、所得から控除できるのは8,000円ということになります。ちなみに、購入金額の上限は8万8,000円です。つまり、8万8,000円-1万2,000円=7万6,000円が、所得から差し引ける(控除できる)上限額となります。
税金額は所得に税率を掛けて計算されますから、所得から控除できる金額が多いほど、結果的に納める税金額は少なくて済むわけです。
次のポイントは、個人で納める税金は所得税と住民税の2つある、ということです。つまり、戻ってくる税金の効果はそれぞれの合計ということになります。
3つめのポイントは税率です。
住民税率はどの地域に住んでいても一律10%なのですが、所得税率は累進課税といって所得の金額に応じて5~45%の税率が適用される仕組みになっています。つまり、上記事例での「税効果」は、結局のところ夫の所得水準しだい、ということになります。
家族構成や配偶者の所得水準によっても夫の「所得」金額に変動があるのですが、ざっくりいうと、年収600万円程度を境に5%と10%の適用が分かれます。ですから、所得税率が5%と10%の場合とで効果を計算しておくと、多くの方に当てはまるかと思います。
以上のポイントを踏まえ、事例の金額で計算した場合
■所得税率5%の場合の税効果
所得税8,000円×5%=400円
住民税8,000円×10%=800円
合計1,200円
■所得税率10%の場合の税効果
所得税8,000円×10%=800円
住民税8,000円×10%=800円
合計1,600円
ちなみに、控除できる上限は7万6000円ですから、上限額で申告した際は、所得税率5%で合計11,400円(3,800円+7,600円)、10%の場合で合計15,200円(7,600円+7,600円)が、それぞれの税効果となります。
なんとなく効果のイメージができましたでしょうか。
対象医薬品はパッケージにマークが
この税制の対象医薬品ですが、薬のパッケージに対象医薬品である「スイッチOTC」のマークが表示されていたり、レシートに対象であることが分かるように表示されたりしていますので、そこで確認することが可能です。あるいは、厚生労働省のホームページに医薬品名の一覧表がありますので、気になる場合は調べてみるとよろしいかと思います。
スイッチOTCマーク
こうした制度を知って税金の還付を受けることも大事ですが、個人的にはそもそも薬を買う必要のない体づくりを心掛けることも非常に大事かなと思います。
「医食同源」という言葉があるように、日頃の食事や適度な運動を心掛けることも、併せて忘れないようにしていただきたいなと思います。
【回答者プロフィール】
回答者/八ツ井 慶子さん
生活マネー相談室代表。家計コンサルタント(FP技能士1級)。
大学卒業後、信用金庫勤務を経て、2001年4月より「家計の見直し相談センター」の相談員としてFP活動を始める。13年7月に独立し、「生活マネー相談室」を設立。個人相談を中心に、講演、執筆、取材などの活動を展開。これまで1000世帯を超える相談実績をもつ。