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パルシステムの健康・おうえんナビ
3月のびぃあらいぶぷらす
今月のポイント!
- 年金の受給開始年齢は60~75歳の間で自由に選べるように
- 受給年齢繰下げの最大のメリットは年金額の増額。ただしデメリットもあり
- ベストな受給開始年齢は人それぞれ。年金の仕組みを知って慎重に選択を
受給年齢の繰下げが75歳まで可能に
公的年金は原則65歳から受け取ることができますが、65歳より遅く受け取る「繰下げ受給」と、早く受け取る「繰上げ受給」を選択することができます。遅く受け取るほど年金額が増額され、早く受け取るほど減額される仕組みです。
令和4年4月1日からの年金制度の改正により、「繰下げ受給」の上限年齢が現行の70歳から75歳に引き上げられることになりました。これにより、年金の受給開始は60歳から75歳の間で自由に決められるようになります。
「繰下げ受給」で増額される金額は、65歳を基準とすると70歳で+42%、75歳で+84%。仮に自分の年金額が年100万円だった場合、10年待って75歳から受け取れば年184万円に増えることになります。
また、「繰上げ受給」にも変更点があり、これまで60歳から受け取る場合は30%減額されましたが、改正後は24%と、減額率が緩和されます。
生涯支給される公的年金。「繰上げ受給」「繰下げ受給」のメリット・デメリット
繰下げ・繰上げ受給を選択した場合の総受給額(生涯で受け取る総額)が、65歳から受給した場合の総受給額を追い越す・追い越される「損益分岐点の年齢」というものがあります。その年齢まで生きているかどうかで損得が分かれるわけですが、それだけではないメリット・デメリットもあります。その一例をご紹介します。
■繰下げ受給をした場合
[メリット]
- 受給額が最大で84%増額される。
[デメリット]
- 損益分岐点の年齢(75歳受給開始の場合86歳11カ月)より前に亡くなると総受給額が少なくなる。
- 社会保険料や所得税、住民税の負担が多くなる。
- 繰下げ期間中は、「加給年金」「振替加算」が支給されない。
- 65歳以降も働き厚生年金に加入した場合、繰下げ増額の対象にならない。
※加給年金…65歳未満の配偶者の生計を維持している場合に加算されるもの。
※振替加算…その配偶者が65歳以降に加給年金から振り替えられるもの。
■繰上げ受給をした場合
[メリット]
- 65歳までの生活費不足や健康不安に対処することができる。
[デメリット]
- 損益分岐点の年齢(60歳受給開始の場合80歳11カ月)を超えるほど総受給額が少なくなる。
- 60歳以降も働き厚生年金に加入した場合は、収入により年金が一部または全額支給停止され、戻ってこない。
- 一度繰上げを選択すると変更できない。
- 障害年金や寡婦年金の受給ができない。
- 「加給年金」「振替加算」は繰上げられない。
※寡婦年金…夫が年金受給前に亡くなった時、結婚10年以上経っている妻が60歳から65歳の間でもらえるもの。
私は「繰上げ」と「繰下げ」のどちらが得なのか
当面の生活費に余裕があるのであれば、受給を待てば待つほどお得なように感じますが、自分にとって「繰上げ」「繰下げ」のどちらがよいかは、「何歳まで生きるか」という単純な損益分岐点だけでは比較できません。繰下げて年金額が増えると、社会保険料や税金も増えてしまいます。健康状態により、増えた年金を有意義に使えないということもあり得ます。
老後の収入、資産、働き方、家族構成、夫婦の年齢差、健康状態、これまでの加入歴など、考える際のポイントは多く、また、夫婦単位で考えれば、「夫婦両方で繰下げ・繰上げ」「夫のみ」「妻のみ」など、選択肢が複雑になります。
自分や家族にとってのベストな受け取り方は、まずは仕組みを正確に知り、老後をどのように過ごしたいのかライフプランを考え、慎重に見極めましょう。日本年金機構の事務所や「街角の年金相談センター」でも相談にのってもらえます。
■参考
【筆者略歴】
筆者/井上 美鈴さん
ライフシンフォニア代表 AFP(日本FP協会認定)
3年間の専業主婦を経て離婚。主婦時代にさまざまなお金の問題に直面し、お金の重要さと知識の必要さを実感したことで、ファイナンシャル・プランナー(FP)の資格を取得。
現在はFPとして個別相談の対応や講演、セミナーなどを実施するとともに、自身の経験をもとにシングルマザーの支援も行っている。